はじめに
本日8月22日は二十四節気の「処暑(しょしょ)」に当たります。処暑は立秋から15日目にあたる時期を指し、2024年は本日8月22日が該当します。
「処」はとどまる、据えるといった意味合いを持っており、処暑とは「暑さが止まる」という意味です。実際にはまだ残暑が続く時期です。しかし、少しずつ秋の気配が感じられるようになり、朝晩には涼しさを感じることも出てきました。この時期は、夏の暑さから秋の涼しさへの移行期間といえます。
自然界の変化
処暑の頃には、以下のような自然界の変化が見られます:
- 蝉の鳴き声が少なくなる
- 秋の花々が咲き始める(萩、桔梗など)
- 稲穂が色づき始める
- 夕暮れが早くなり始める
- 朝露が目立つようになる
ついこの間までは19時なのに明るい!と思っていたような気がしますが、昨日は18時40分には日が落ちて暗くなっていました。個人的には1日が短くなったような気持ちになるので、少し寂しさを感じます。
生活と文化
処暑の時期には、以下のような生活や文化の変化が見られます:
- 残暑見舞いを送る
- 秋の味覚(梨、ぶどうなど)が出回り始める
- 夏の疲れを癒すための養生を心がける
- 秋の衣類を準備し始める
- 秋の行楽の計画を立て始める
スーパーの果物コーナーではぶどう、桃、梨が目立っていますね。そしてしまっていた長袖もそろそろ出し始めておいた方がいいのかもしれません。逆にくたびれたTシャツはそろそろ捨て時でしょうか。
処暑を詠んだ著名な俳句
処暑は俳句の季語としても広く使われています。ここでは、処暑を詠んだ著名な俳句をいくつか紹介し、その意味を解説します。
1.藤村の絶筆をふと思ふ処暑 / 雨宮更聞
この句は、文豪・島崎藤村の最後の作品を思い出す様子を詠んでいます。処暑の季節感と、偉大な作家への敬意が静かに表現されています。
ちなみに藤村の絶筆は『東方の門』という大作ですが、未完のままとなっています。wikipediaによると8月22日に「涼しい風だね」という言葉を残して亡くなったそうなので、そのような背景を踏まえての一句なのだと思います。
2.処暑の風入れて家族の帰り待つ / 阪尻勢津子
処暑の涼しい風を感じながら、家族の帰りを待つ穏やかな家庭の情景を描いています。季節の変わり目と、日常の温かさが融合した句です。夏の終わりを感じさせるものの一つとして風があるというのは、先の藤村のエピソードとも重なるところがあります。
3.空つぽの鳥籠処暑の風が吹く/甲斐すず江
こちらも同じく風をモチーフにした処暑の句です。逃げてしまったのか死んでしまったのか、不在の鳥籠を風に揺れる様子が読まれています。お盆休みにはいろいろな場所に人が集まり賑わいを見せますが、処暑の時期はその賑わいが薄れてきた、いわば「不在」の時期と言えます。ただ吹き抜けていく風が、「不在」を色濃く感じさせます。
これらの俳句は、処暑という季節の特徴を巧みに捉え、その微妙な変化や情景を凝縮して表現しています。
まとめ
処暑は、夏から秋への移行期を象徴する二十四節気の一つで、まだ暑さは残るものの、少しずつ秋の気配が感じられる季節です。自然界の変化や生活習慣の変化、そして文学作品にも大きな影響を与えてきました。日本の伝統的な季節感を理解する上で、処暑は重要な概念の一つといえるでしょう。
現代社会では、エアコンの普及や地球温暖化の影響で、かつてのような季節の移り変わりを感じにくくなっているかもしれません。しかし、処暑のような伝統的な季節の区切りに注目することで、自然のリズムや季節の変化をより意識的に感じ取ることができるのではないでしょうか。
処暑を意識して過ごすことで、日本の伝統的な季節感を味わい、自然との調和を図る生活を送ることができるかもしれません。これからの季節、処暑の風を感じながら、秋の訪れを静かに迎えてみてはいかがでしょうか。
コメント